松前屏風
紹介文
『松前屏風』は、龍円斉児玉貞良によって、宝暦年間(1751~1763)に、松前城下の秋を描いたものと云われている。高さは1.57m、幅は3.65mあり、六曲一双で、『江差屏風』がこれに対になると考えられることから、半双屏風と記されることもある。また、ここに描かれた風景は、約260年前の松前城下であるが、神社・寺町の位置や、商人の蔵が並んでいる地割(道路の配置)は、現在の地割と比較して、ほとんど変わっていないことが判る。また、屋根瓦の建物が多く、これは海岸沿いに商人が集住し、その商品を保管する土蔵と、豪商の邸宅が並んでいたことに起因する。この屏風は、小樽内の場所請負人であった、近江八幡の「イチゼンバシ」恵比寿屋岡田弥三右衛門が、松前での出店の繁昌を後世に伝えるために描かせたと考えられ、滋賀県近江八幡市の同家に長く保存されていた。当時の松前城下の風俗にいたるまで、様々な情報を伝える貴重な文化財である。